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,H269 lounge chair by Jindřich Halabala, DCW by Charles and Ray Eames, Cube nesting tables in solid teak by Jens Harald Quistgaard, AP38 Airport chair by Hans J. Wegner, CU01 Japanese series cabinet by Cees Braakman, Bookshelf with desk in oak by Johannes Sorth, Wire leaf pattern lounge chair by Cees Braakman and A. Dekker, AT 312 dining table in oak by Hans J. Wegner, F1 desk chair by Willy Van Der Meeren, Spinetto dining chair by Chiavari…他
H269 lounge chair by Jindřich Halabala
チェコスロバキアの家具デザイナー「ハラバラ」の傑作。作られた時代は1930年代、約90年前に誕生したことになる。豊満な見た目に相応しく座り心地はこの上なく優雅だ。曲木技術を自在に操り、存分に表情を作っている。座ると緊張がほぐされ、しなやかな思考を引き寄せる。生涯を通して、作家、技術者、教育者と多岐に渡り活躍したその根幹には、バウハウスの理念が基づいていたとされる。第一次世界大戦、第二次世界大戦とその狭間で独自のデザインを貫き通した強い信念が、作品にしっかりと宿っている。
DCW by Charles and Ray Eames
Cube nesting tables in solid teak by Jens Harald Quistgaard
作品からほとばしる瑞々しい刺激が特別な光景を生み出す。クイストゴーの世界観はすこぶる超越的である。人生を深く広く視野を広げよと誘導してくるのだ。空想と戯れながら思わず微笑んでしまう。無垢のチーク材が組み手の美しさを強調、斜走木理で意匠を表現、仕事の入念さが作品を神秘に近づけている。アイデアを彫琢し、素材を美術品へと導くクイストゴーの手腕には驚くばかりだ。
Model FH 9230 armchair by Henning Larsen
思い掛けない作品と出会った。デンマークが誇る建築家ヘニングラーセンの作品だ。ミッドセンチュリー時代、次々と生み出された息をのむ建築物は、その斬新さゆえあらゆる方面に多角的影響を与えた。椅子の形状とスチールの輝きに当時「光の巨匠」と呼ばれた所以が見て取れる。
AP38 Airport chair by Hans J. Wegner
1959年、コペンハーゲンのカストラップ空港内ラウンジ用にデザインされたAP38は、空港ならではの様々な特徴を持つ。子供からお年寄りまで立居がスムーズにできるよう絶妙な角度を設定、たとえ恰幅のよい人が勢いよく腰をかけてもびくともしない強度、予め内側にL字スチールが嵌め込まれているのだ。L字はデザインとしても絶妙なバランスを担っており、椅子全体の威容を鼓吹している。なぜウェグナーの作品が人々を幸せに導くのか、どうやら作品に思い掛けない機微が宿っているようである。
CU01 Japanese series cabinet by Cees Braakman
1934年、PASTOEで家具作りに携わったのが弱冠17才、非常に若い頃から才能を開花させた作家だ。デザインを始めてから13年後にアメリカを訪れた際はイームズ夫妻が手掛けるデザインに呼び起こされるものがあった。また、のちの日本滞在では日本が誇る”用の美”に魅せられ、「Japanese series」が華麗に誕生した。長い年月をかけて培ってきた家具作りの経験が形状に響き渡っている。デザインで浮き彫りになる素材の役目も決して蔑ろにしない。シーズ・ブラークマンがデザインした作品は、今後ますます貴重になると想起される。
Bookshelf with desk in oak by Johannes Sorth
どの部分を取ってみても使い手への心遣いが感じられる。スムーズに開閉する蛇腹の内側にも細かい細工が施され、日常使いの満足度を満たしてくれる。ものづくりに対しては「誇りと責任感」両方がないと長くは続かない、当時のデザイン記述の言葉に納得である。作家の充実した感性や隅々まで配慮の行き届いた職人の心意気が気持ち良さを生む作品である。
Wire leaf pattern lounge chair by Cees Braakman and A. Dekker
ブラークマンとデッカーのクリエイティブさが意気投合、それまでの経験値が確りと合致、彼らの感性が一つの作品に注ぎ込まれた。家具とアートの境界線を有意義に楽しむと同時に、インダストリアルの波を存分に味方につけ相互に価値を高め合った。追憶のデザインが今なお与え続けている影響は大きい。卓出したアートピースだ。
F1 desk chair by Willy Van Der Meeren
鋭い視線と行動力でベルギーのモダニズムを牽引、飽くなき追求のもと生まれた逸品たちは、膨れ上がるほどに好奇心を刺激する。当時、ヴァン・ダ・ミーレンが設計した建築物や家具は、超越的デザインと世間を驚かせた。建築に用いたプレハブ軽量資材は、柔軟で社会性に富んだアイデアと称され、信頼できる造形美のへの道標となった。感覚を研ぎ澄ませ作品を作り、それを提供することで一層彼の中の芸術がリアリティ化したのだ。既成概念に囚われることなく生涯独自の美を追いかけた彼の一途さが、作品の隅々まで行き渡っている。
AT 312 dining table in oak by Hans J. Wegne
清澄な空気感に思わずため息が出る。全ての角が美しい丸みを帯びている。見えない箇所にまで微細な工夫が施されている。使い手に対するウェグナーの配慮の深さ、惜しみない考慮が垣間見える。作り手が自身を追い込み、ものづくりに真剣に取り組む姿勢が作品に表れている。デザインの真骨頂、伸縮の美もまた溜息を誘うだろう。
Spinetto dining chair by Chiavari
場所を選ばず、今そこにある空間を美しく際立たせる。スピネットダイニングチェアは、輪郭に含まれた絶妙なラインで景色を見事に吸収し、そして経年美を目一杯に解き放つ。キアヴァリが抱いた美の概念が卓越したデザインに反映され、今も存在している姿を見るとそれだけで感慨深い。「椅子のある風景」という言葉がぴったりな作品だ。