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NV53 Settee in teak by Finn Juhl,TU30 dining table in rosewood by Cees Braakman,Spinetto dining chair by Chiavari,AP19 Papa bear chair in teak by Hans J. Wegner,RY20 cabinet in teak & glass by Hans J. Wegner,Model GS195 sofa & daybed by Gianni Songia,Small sideboard in teak
NV53 Settee in teak by Finn Juhl
削り込みの美しさに、作家と職人の情熱がみなぎっている。造り手の尊い希求心が細部に現れ見る側を驚かせるのだ。私は実際興奮気味で撮影に挑んだ。フィン・ユールはどのような想いを抱きながら線を描いたのか、書物に記されている資料だけでは真髄は掴めない。真正面からの姿、真横から、目と心で作品を追いかける。背に光を帯びた神秘な佇まいに吸い込まれそうだ。緩やかな曲線に歩み寄ると更に今度は作品の影が生む濃淡が気持ちを拐ってゆく。作品の持つ魅力にどんどん心が奪われていく、心酔を巻き起こすとはまさにこのことである。この作品の奥深くに潜む真髄、それを見つけるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
TU30 dining table in rosewood by Cees Braakman
「ほほう、モダンの中にもこういう捉え方がありますか」と、思わず目を凝らさずにはいられない。スチールとローズウッドの親和性を独自の世界観で形状化している。僕はしばらくデザインを多面的に眺めながら作品の持ち味をじっくりと味わった。ブラークマン作品はその独特の作風から雑念を排除させる節がある。家具作りへの深い思いがそのまま作品に表れていて、それが観る側にも伝わるからだろう。また、時間を刻む愉しみと同時に感性を研ぎ澄ましてくれるのも特徴の一つ。世界中でも評価が抜きん出ており、益々希少性が高まっているのも安易に理解できるのだ。
Spinetto dining chair by Chiavari
1950年代に誕生した「スピネット」キアヴァリチェア、当時の時代風景を記憶しながらたたずむ容姿はおしなべて繊細で美しい。見れば見るほど作るのに高い技量を要したと推測される。作家の人間性が垣間見れるほど線が特徴的で優雅なのだ。空間に置かれた際に生まれる詩的な雰囲気は音を奏でるようにあなたの感性に響くだろう。
AP19 Papa bear chair in teak by Hans J. Wegner
この優雅な形状に腰を下ろしながら大きく息を吸って、そして目を閉じて感じて欲しい包み込まれる優しい感覚を。その目線から日常をぐるりと見渡すと、周りとの繋がりに線が芽生えないだろうか。掛け合う言葉も感情も実際には心の持ちようでどんどん良い方へと紡がれていくものだ。ウェグナーの作品は、そのことを鮮明に示してくれる。感情を整えながら心地よく暮らすことに助力を惜しまない。(普段は気に留めていなくとも、住まいの空間から受けている影響は思いの外大きい。)それは見方を変えれば、ウェグナーが使い手の生活空間にポンと置いていってくれた感性のお裾分けに近い。日常を豊かにしてくれる極上のお裾分けだ。パパベアチェアが不朽の名作と呼ばれる所以は増え続ける一方である。
RY20 cabinet in teak & glass by Hans J. Wegner
この可能性に満ち溢れた存在感を目の当たりにすると、日頃使っていなかった思考の回路がツンツンと刺激され「感性の電流」が全身にゆっくりと流れ出す。まるでデザインとの同化を楽しむように素直にウェグナーデザインに触発され、呼吸を整えながら秀逸作品の隅々を探索する。接合の美しさに目が止まる。これだけの大きさ・重量を分散させるためには相当な配慮を要するはずである。特にデザイン性の高い細い線が強度を増すためにどのように配置し接合するべきか、徹底的に分析しながら設計されている。引き出しの塩梅、取手の持ち具合、収納の分布も申し分ない。作家の感性を結集した作品には、性格がある。
Model GS195 sofa & daybed by Gianni Songia
デザインが持つ特殊な性質により背もたれが可動、瞬時にデッドへと変形してくれる。日常その時々に応じて自由自在に変化を遂げる柔軟さは愉快なほど。また、重厚さを担う力点は用の美を備えながらしっかりと作用、圧倒的に魅力を噴出する。充実度への配慮とデザインの関係性も見事と言える。それは、物事を考え抜いた向こう側にしか見えない世界があるのとどこか似ている気がしてならない。さらに、ジャンニ・ソンギアの斬新な造形には使い手の思考を開眼させるという特徴があるのだ。
Small sideboard in teak
家具職人が努力を惜しまず蓄積した技術が一つの作品を作り上げ、そして長い年月大切に受け継がれ今に存在する。この魅力的な流れをじっくり堪能させてくれる作品だ。小ぶりながらも存在感があり、頼もしさを感じさせる。今では作り得ない細部のこだわりがいい、規格外の好奇心は見ていてワクワクする。心奪われる取手の形状は、まるで「人生は型どおりでなくても良いのだ」と物語っているように感じる。見応えのある素晴らしい傑作が既成概念を取っ払ってくれるのだ。非常に面白いサイドボードだ。